特別区経験者採用で公務員に転職!年齢制限・倍率・対策を徹底解説!

公務員への転職を考えている社会人の皆さん、特別区(東京23区)が意外と狙い目なことをご存じですか?

他の都道府県庁や政令指定都市の経験者採用試験の倍率が数十倍になることも多いのに対し、特別区の経験者採用試験の倍率は6倍~15倍程度です。
もちろんラクラクとはいかないかもしれませんが、しっかり対策すれば合格も夢物語ではありません。

そこでこの記事では、特別区経験者採用試験の受験を考えている皆さんに向けて、試験内容とその対策法を徹底的に解説します。

ぜひ参考にしてください!

特別区経験者の採用方式

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特別区経験者採用の採用方式は独特です。

特別区の23区は、千代田区、中央区、港区、新宿区など、それぞれ独立した自治体ですが、職員の採用は合同で行っているのです。

自分の希望する区があっても、まずは23区が合同で行っている「特別区採用試験」を受験して合格しなくてはいけません。

その後に、「区面接」と呼ばれる、各区が実施する面接試験を受験します。(後述しますが、成績によっては自分の希望する区の面接が受けられない場合もあります。)

そこで合格できれば、晴れてその区の職員としての採用が決まる、というしくみです。

特別区経験者の採用区分

特別区の経験者採用試験は、職務経験の長さによって「1級職」「2級職」「3級職」の3区分が設けられています。このうち、3級職はほとんどの職種で募集がないため、ここでは省略します。

 

昇任制度のイメージ(大田区HPより引用)

1級職で採用され入庁した場合、職歴3年目の職員と同等の立場からのスタートとなります。

新卒採用と比べると初めから基本給が高く、その後の昇任選考を早く受けることが可能です。

2級職で採用されると、さらに上の「主任」としてスタートできます。

新卒から入ると、ある程度の経験を積み、昇任選考をクリアしなければ主任にはなれません。そう考えると、経験者採用はかなりお得に感じられますね!

特別区経験者採用の受験資格

eligibility

特別区経験者採用試験を受験するには、次の「年齢制限」「職務経験年数」をクリアしていることが必要です。

特別区経験者採用の年齢制限

採用年の4月1日現在で59歳以下であることが条件です。1級職、2級職共通です。

受験申し込み時点で59歳でも、採用される4月1日時点で60歳になってしまう場合は受験できないので注意しましょう。

職務経験年数

会社員や自営業者などとしての職務経験が1級職、2級職でそれぞれ次の年数必要です。

特別区経験者採用試験では、他の自治体や国家公務員としての職務経験もカウントされます。

公務員の職歴をカウントしない自治体も多いので、該当する方にとって特別区は狙い目です!

特別区経験者採用の日程

上で触れたように、特別区経験者採用試験の流れは独特です。

ここでは、令和4年度(2022年度)の日程に沿って、内定までの流れを確認しましょう。

上記の通り、特別区が合同で行う第1次、第2次試験に合格後、「区面接」までクリアして初めて「内定」となります。

区の希望は、第1次試験申込み時に入力しますが、必ずその区の面接を受けられるわけではなく、最終合格順位と希望区を参考に決められる点にも注意しましょう。

しっかり対策して、上位の成績を取っておきたいですね!

2級職の場合は、第2次試験後の最終合格発表が事実上の内定となり、区面接は実質的には意向確認の場です。このため、2級職が区面接で不合格になることはほぼありません。

特別区経験者採用の倍率

competition

公表されている倍率

特別区経験者採用は採用人数が多いため、他の自治体の社会人採用や大企業の入社試験と比較すると、倍率は比較的落ち着いていると言えます。

ここ3年の倍率は次の通りです。

1級職2級職
2020(令和2)年度8.014.2
2021(令和3)年度7.612.9
2022(令和4)年度6.07.9

令和4年度経験者採用試験・選考実施状況より引用)

このように6~15倍程度なので、人気企業の倍率が数十倍であるのと比べると、がんばれば十分希望の持てる倍率と言えるでしょう。

実質的な倍率

しかも、実際の倍率はさらに低い可能性があります!

次の表をご覧ください。2022(令和4)年度の特別区経験者採用(事務職)の試験結果です。

申込者第1次受験者第1次合格者第2次受験者最終後合格者倍率
1,702人1,287人 436人424人215人6.0

倍率の6.0という数字は、「第1次受験者÷最終合格者」で算出されています。

しかし、よく見ると、第1次合格者のうち、第2次試験を受験していない人が12人いることがわかります。

実質的な倍率は、「実際の受験者数÷最終合格者数」で求められますので、確認してみましょう。

【1級職】

第1次試験倍率第2次試験倍率
2020(令和2)年度4.01.9
2021(令和3)年度4.11.8
2022(令和4)年度3.02.0

【2級職】

第1次試験倍率第2次試験倍率
2020(令和2)年度4.73.0
2021(令和3)年度4.82.6
2022(令和4)年度3.22.4

これが特別区の実質的な倍率です。ますますやる気の湧く数字ではないでしょうか?

第1次試験のほうが、第2次試験よりも倍率が高いこともわかります。まずは第1関門に全力を注ぎたいですね。

ただし、第2次試験の口述試験(個別面接)は配点が高く、このでき具合によっては順位が大きく変動すると言われていますので、こちらもしっかりと対策をしましょう。

人気区の区面接倍率

ここまで見てきた倍率は、特別区合同の第1次、第2次試験のものですが、ここからはその後に行われる「区面接」の倍率を見てみましょう。

人気区の区面接倍率は、当然ながら非常に高い傾向があります。

採用予定者が「若干名」であることも多く、その区を数十人が第1希望にしていれば倍率は数十倍になります。区面接に至るまでの試験の倍率と合わせて考えると、他の人気自治体を大きく上回る倍率になることも考えられます。

つまり、人気区の内定をもらうためには、第1次試験の教養試験で上位の成績を確保するとともに、配点が高いと言われる論文試験や口述試験の対策を早くから初めて万全にしておくことが必要だということです。

押さえておきたいポイント

教養試験に注力する人は落ちる!

特別区経験者採用の第1次試験で行われる教養試験は、受験者にとって第1関門であり対策もしやすいため、教養試験にばかり注力する人がいます。しかし、これはおすすめできません。

なぜなら、教養試験は「足切り」の材料としてしか使われないからです。足切りラインをクリアできていれば、満点でもギリギリでも同じです。令和4年度の経験者採用試験の選考案内にも、教養試験を合否の判断に用いないことが明記されています。

第1次試験の論文試験と第2次選考の口述試験が合格のカギですので、教養試験を合格レベルまで対策しつつ、論文と口述試験の対策をより徹底的に行うことが必須です。

職務経歴書は最初の申込み時に必要!

特別区経験者採用で重要な参考資料とされる「職務経歴書」ですが、この入力が6月~7月の申込み受付時に必要なことも要チェックです。単純な履歴書ではなく、くわしい職務経験志望動機を入力しなくてはいけません。

「とりあえず申し込んで、そのあと考えよう」ということができませんので、

申込み時までに職務経験をきちんとまとめ、志望動機をしっかり練り上げておく必要があります。申込み期間中であれば遅くなっても全く問題はありませんので、十分準備をしてから申込みをするよう留意しましょう。

過去に問われた内容をご紹介しますので、参考にしてください。

1.あなたが特別区職員を志望する理由を、携わりたい職務と、その職務を通じて実現したいことを交えて記入してください。(320文字以内)

2.あなたが、特別区が求める「自ら考え行動する人材」に当てはまる人物であることを、今までの職務経験をもとに記入してください。(320文字以内)

3.今までの職務経験の中で失敗の許されない状況に直面した際、それをどのように解決に導いたか記入してください。(320文字以内)

4.【1級職】今までの職務経験の中で、あなたがチーム(組織)として達成したことを、あなたのチームにおける役割や、どのようにチームに貢献したかを交えて記入してください。 (320文字以内)

【2級職】今までの職務経験の中で、あなたが部下や後輩の指導・育成にあたった際、最も重視した点を記入してください。 (320文字以内)

「氷河期採用試験」との併願は不可

受験者の中には、特別区経験者採用試験の受験資格と同時に、「就職氷河期世代対象試験」の受験資格にもあてはまる方がいることと思います。しかし、この2つは併願できませんので注意してください。

もし重複して申し込んでしまった場合は、先に受信されたほうが受理されます。

第1次試験の内容と対策法

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次に、特別区経験者採用の第1次試験の内容と対策法を見ていきましょう。

特別区経験者採用の教養試験

 内容は、一般的な公務員試験とほぼ同じと考えてよいでしょう。

出題範囲は特別区Ⅰ類(大卒程度)採用試験と同じですが、経験者採用のほうがかなり易しめな傾向があります。

したがって、難易度の高い「特別区Ⅰ類」の過去問ではなく、「特別区経験者採用試験」の過去問を徹底的に解いて出題傾向に慣れておきましょう。

上でもお伝えしたように、教養試験は足切りの材料にすぎませんので、ここで無駄に難易度の高い勉強をするのは非効率です。

教養試験は足切りにかからないよう効率的に対策し、空いた時間で論文や口述試験の対策に力を注ぎましょう。

特別区経験者採用の職務経験論文

1題必須回答
制限時間:1時間30分

仕事への取り組み方仕事に向き合う姿勢を見る出題です。

自分のこれまでの職務経験をアピールしつつ、課されたテーマについて客観的に述べることが求められます。

過去の出題例を見てみましょう。

【令和2年度】

仕事の優先順位について、あなたのこれまでの職務経験を簡潔に述べてから、その経験を踏まえて採用区分における立場として論じてください。

【令和3年度】

仕事における目標設定と振り返りについて、あなたのこれまでの職務経験を簡潔に述べてから、その経験を踏まえて採用区分における立場として論じてください。

【令和4年度】

職場の活性化について、あなたのこれまでの職務経験を簡潔に述べてから、その経験を踏まえて採用区分における立場として論じてください。

【特別区経験者採用】過去問:教養試験・職務経験論文・課題式論文より引用)

職務経験をアピールすることは必要ですが、自己PRに終始しないよう注意が必要です。

ただの経験談で終わらせず、経験から学んだことを客観視し、それを入庁後にどう活かそうと考えているのかを述べることが求められます。

自分が学んできたことを客観的に整理するとともに、希望する区が抱えている課題をしっかりと把握し、その課題解決に自分がどう貢献できるのかを考えておきましょう。

特別区経験者採用の課題式論文

2題中1題を選択して解答
制限時間:1時間30分

第1次試験では、「職務経験論文」と合わせて「課題式論文」も課されます。

課題式論文の過去問例を見てみましょう。各年度、2題中1題を選択して解答します。

【令和2年度】

  1. 住民意識の多様化と自治体職員の役割について
  2. 若者の区政参加と地域の活性化について

【令和3年度】

  1. インターネットを活用した誰もが利用できる行政手続に向けた取組について
  2. 持続可能な財政運営と区民サービスについて

【令和4年度】

  1. シティプロモーションについて
  2. 複雑化・多様化する区民ニーズへの対応について

【特別区経験者採用】過去問:教養試験・職務経験論文・課題式論文より引用)

傾向としては「特別区の抱える課題」「区役所と地域(住民)の関わり」「区政運営のありかた」を問うものが多く出題されています。付け焼刃で対応できるものではありません。

職務経験論文のところでも触れたように、区が抱えている課題や現状を把握し、行政のあるべき姿をしっかりと認識しておくことが欠かせません。

予備校を利用するのが王道

特別区経験者採用の論文対策を徹底したいなら社会人採用の予備校を利用するのが王道です!

論文は多様なテーマについて書く練習をくり返す必要がありますが、その際大切なのは、ただ書くだけではなく、“客観的に評価してもらうこと”です。これは、独学ではなかなか難しいもの。できれば専門家に見てもらえると安心です。

社会人採用を専門的に指導している予備校としては「Gravity」がダントツで有名です。特別区経験者採用に合格実績のある講師が、論文と面接の徹底対策をしてくれる予備校です。興味がある方はぜひチェックしてみてください。

第2次試験の内容と対策法

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次に、特別区経験者採用の第2次試験の内容と対策法を見ていきましょう。

特別区経験者採用の面接試験

特別区経験者採用の第2次試験では、口述試験として、人物、職務経験及び職務に関する知識等についての個別面接が行われます。この際、申込み時に入力した「職務経歴書」が参考として用いられます

「職務経歴書」は、申込時に入力してから時間が経っているので、「何を書いたかな??」と忘れてしまう人もいるようです。そうならないよう、入力内容の控えを必ず取っておきましょう。自分のこれまでの職務経験について、口頭でも簡潔にわかりやすく説明できるよう練習が必要です。

また、特別区Ⅰ類や就職氷河期世代対象試験と同じく、特別区の施策や課題などについてどれだけ把握しているかも問われます。しっかりリサーチしておきましょう。

過去の出題例を、採用区分ごとにご紹介します。

【1級職】

  1. あなたが特別区職員を志望する理由を、携わりたい職務と、その職務を通じて実現したいことを交えて記入してください。(320文字以内)
  2. あなたが、特別区が求める「自ら考え行動する人材」に当てはまる人物であることを、今までの職務経験をもとに記入してください。(320文字以内)
  3. 今までの職務経験の中で失敗の許されない状況に直面した際、それをどのように解決に導いたか記入してください。(320文字以内)
  4. 今までの職務経験の中で、あなたがチーム(組織)として達成したことを、あなたのチームにおける役割や、どのようにチームに貢献したかを交えて記入してください。 (320文字以内)

1級職の面接では、上記のほかに、特別区Ⅰ類(大卒程度)の採用試験で行われている職務経歴書のプレゼンが求められる場合もあると言われています。時間は約3分です。

100%求められるというわけではないようですが、「プレゼンがある」と思って準備しておくことは必要です。

職務経歴書の控えを取っておき、くり返し読み直してしっかり頭に入れておきましょう。

【2級職】

  1. あなたが特別区職員を志望する理由を、携わりたい職務と、その職務を通じて実現したいことを交えて記入してください。(320文字以内)
  2. あなたが、特別区が求める「自ら考え行動する人材」に当てはまる人物であることを、今までの職務経験をもとに記入してください。(320文字以内)
  3. 今までの職務経験の中で失敗の許されない状況に直面した際、それをどのように解決に 導いたか記入してください。(320文字以内)
  4. 今までの職務経験の中で、あなたが部下や後輩の指導・育成にあたった際、最も重視した点を記入してください。 (320文字以内)

入庁後すぐ主任としてスタートする2級職の口述試験では、「職場事例問題」が出題されます。

実務上起こり得る「職場での課題やトラブル」についての長文(A4用紙1枚)を1分間で読むよう求められ、その後、その課題やトラブルに主任としてどう対処するかについての質疑応答が行われます。

これまでの職務経験の中でどのように課題を解決してきたかを振り返って整理しておくとともに、日常生活の中でも「今なすべきことは何か?」「この行動をとった理由は何か?」などを言語化する習慣をつけておくとよいでしょう。

特別区経験者採用まとめ

特別区経験者採用試験の試験内容とその対策法をご紹介しました。

独特な採用の流れや、論文試験、口述試験の重要性をおわかりいただけたことと思います。

特別区経験者採用の合格を確実に勝ち取るためには、教養試験のみならず、論文と面接の対策を徹底的に行うことが必須です。専門予備校を利用するなどして、悔いのない準備をして臨みましょう。

この記事を読んだみなさんの健闘と合格を、心よりお祈りしています!

なお、下記の記事では特別区経験者採用におけるオススメ予備校ランキングを紹介しています。
特別区への転職を決めたい方は是非ご一読ください!